ワセオケ クラシック風説書:vol.9
ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調作品125
年末年始に必ずと言っていいほど演奏され、最も有名な部分は「歓喜の歌」として音楽の教科書に載るほどのこの作品。日本人にとって最もなじみ深いクラシック音楽と言っても過言ではないでしょう。
海外ではやはりその大きな編成から演奏される数こそ日本ほどではないですが、第二次世界大戦直後のバイロイト音楽祭やベルリンの壁の崩壊を記念したコンサートなど、祝典において演奏されるアニバーサリー・ピース的な側面も持っています。一部ですが、YouTubeにベルリンの壁の崩壊記念コンサートの様子も載っています。
ただしもしも初めてこの交響曲を聴く方、特に「歓喜の歌」の部分のみをお目当ての方がいらっしゃるならば要注意です!それもそのはず、あの有名な箇所に到達するまでに1時間弱かかってしまうのですから。
そんな長大な交響曲は、いわばベートーヴェンの集大成とも言うべき構成で、様々な革新的な要素が含まれています。例えば第1楽章の冒頭における音楽の進行一つとってきても当時としては非常に奇抜です。それに、交響曲なんてものはそれまで楽器だけで演奏していたので、それに人の声を持ち込むなんて試みは斬新そのものです。そんな作品をベートーヴェンは耳が全く聞こえないまま作曲したのですから、(もはや自明ですが)とんでもない作曲家です。
さて、前述の通りこの交響曲で有名なのは第4楽章ですが、だからといって第1楽章から第3楽章までが駄作かというと、そんなことは決してありません。先行する3つの楽章は全て第4楽章への伏線となっていますから、ぜひともその長さに恐れ慄かずに聴いていただきたいです。
おすすめ音源
ダニエル・ハーディング / バイエルン放送交響楽団
2019年には指揮者活動を休止し、エール・フランスでパイロットとしてのキャリアをスタートさせた多才な若きマエストロ、ダニエル・ハーディングによるものです。瑞々しいまさに21世紀のベートーヴェンといった演奏です。
(Vn.4 Shusei)