ワセオケ クラシック風説書:vol.10
ベートーヴェン/ミサ・ソレムニス(盛儀ミサ曲)ニ長調作品123
皆様、新型コロナウイルス予防に伴う自粛期間、いかがお過ごしでしょうか。私は日々を無益に溶かし続けています。いざ毎日家から出ないとなると結局何をする気も起こらないのが悲しき人間の性。我々はなんと弱い生き物なのでしょう。そんな心も体も荒みがちな時にピッタリなのが宗教曲でございます。
エモい宗教曲
日本人にとって宗教曲がとっつきにくいものであることは確かです。しかし、元はと言えば音楽を通して神の威光を体感的に伝えるためのモノ。言ってしまえばパっと聞いた瞬間「エモい・・・」と思えるような曲が多いのです!中でもベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」は古今東西のミサ曲の中でも屈指の名曲として讃えられています。
ミサ・ソレムニスを作曲するベートーヴェン
ミサ曲とは
そもそもミサ曲とは、簡単に言えばカトリック教会の典礼(ミサ)に伴う声楽曲の事です(正確には少し違いますがややこしいので省きます。調べてみて下さい)。そしてミサ曲は基本的に歌詞が決まっており、Kyrie(求憐誦)、Gloria(栄光頌)、Credo(信仰宣言)、Sanctus(三聖頌)、Benedictus(祝福、短いことが多い)、Agnus Dei(神の子羊、平和を祈る賛歌)で構成されています。ベートーヴェンのミサ・ソレムニスも基本的にはこれに則って書かれており、大司教のために書かれたという経緯からも教会用の作品であることは確かです。しかし、この作品は単なる宗教音楽を超えたものであると言われています。
というのも、この作品は伝統的なミサ曲とは異なった、斬新な箇所が多く、かのワーグナーなどは(交響曲第7番の項にも登場)「真正なベートーヴェン的精神を持つ、純粋な交響的作品」と評しています。この作品が純粋なミサ曲と言えるのかは意見の分かれる所ですが、逆に「普通の曲」として聴いても問題がないと考えればハードルも下がるのではないでしょうか?ものは言いようです。
心より出で
荘厳なDの主和音で幕を開ける第1章Kyrie 。自筆譜冒頭には“Vom Herzen―Möge es wieder zu Herzen gehen”「心より出で-願わくば再び心に帰らん」という言葉が記されています。ベートーヴェンらしい高揚感にあふれた第2章Gloriaに続き、第3章Credo後半の大フーガでは晩年のベートーヴェン熟練の技が光ります。第4章Sanctusは通例とは異なって静謐に始まり(冒頭のSanctus,...は強奏であることが普通)、第4章に組み込まれたBenedictusはベートーヴェンが用いた旋律の中でもとりわけ美しく、これも通例のBenedictusに比べかなり充実したものになっています。そして、「苦悩から歓喜へ」を思わせる第5部Agnus Deiで力強く幕を閉じるのです。
友人や愛する人にも中々会えず、余りあるのは時間だけ。日に日に起き出すのも億劫に。さあ、そんな毎朝をこの曲で始めてみましょう。カタルシスと共に浄化される精神、目覚める身体、布団より出で願わくば再び布団に帰らん、そして気がつけば昼。
言い忘れてました。この曲、1時間半あります・・・逆にこんな時だから聴ける!ものは言いようで
おすすめ音源
カール・ベーム指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,ウィーン国立歌劇場合唱団 (1974年)
Spotify:
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https://music.apple.com/jp/album/beethoven-missa-solemnis/1452155317
ニコラウス・アーノンクール指揮/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス,アルノルト・シェーンベルク合唱団(2015年)古楽演奏
Spotify:
Apple music:
https://music.apple.com/jp/album/beethoven-missa-solemnis-in-d-major-op-123/1108583190
(Vn.2 山本大地)