ワセオケ クラシック風説書:vol.5
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調作品67
ダダダダーンという悲劇を象徴するような音形。誰でも耳にしたことあるようなこの音形で始まるのがこのベートーヴェンの交響曲第5番です。一般には「運命」という愛称でも知られており、そちらの方がピンとくる方も多いでしょう。
暗から明へ
この作品は作曲が1804年、ベートーヴェンが34歳の時です。実はこの2年前にベートーヴェンは「ハイリゲンシュタットの遺書」、端的に言えば難聴への絶望とその肉体的・精神的克服を願う旨の遺書を甥と弟に送っています。この作品はまさにその克服を表すかのように、「暗から明へ」という構成になっています。
大失敗の初演
初演は1808年12月22日、極寒のウィーンで行われました。その時のプログラムは交響曲第6番「田園」やピアノ協奏曲第4番など盛り沢山で、当然そんな寒い中暖房なしでの長時間のコンサートだったので大失敗だったそうです。
ハイリゲンシュタットの遺書
晴々しい勝利宣言
曲の冒頭はかの有名な「運命の動機」で始まり、その音形がずっと重なって進んでいきます。運命の動機はこの運命が激しく戸を叩くような第1楽章のみならず、牧歌的なメロディーが変奏される第2楽章、ベルリオーズが「象のダンス」と形容した中間部を持つ第3楽章、そして闘争に打ち勝った後の台風一過のように晴々しい第4楽章でも登場します。
第3楽章まで全てがどこか翳りある音楽であったのにも関わらず第3楽章の終わりから徐々に光が雲の隙間から差し込み、第4楽章でついにハ長調の勝利宣言を掲げる場面が個人的には最も好きです。
初演後にとある評論家が、音学評論史上初めて音楽に対して「ロマン主義」という表現を用いて批評したこの交響曲、ぜひ全曲を聴いて勝利を噛み締めてみませんか?
おすすめ音源
カルロス・クライバー / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (1975年)
まさに天衣無縫、純粋無垢で流麗な棒捌きを見せた天才指揮者カルロス・クライバーが残した数少ない録音です。ベートーヴェンのあの気難しい肖像画から想像されるような演奏ではなく、もっと軽快でノリノリなベートーヴェンの演奏です。
Apple Music: (トラック番号1-4)
https://music.apple.com/jp/album/beethoven-symphonies-nos-5-7/880709749?l=en
Spotify: (トラック番号1-4)
https://open.spotify.com/album/6eOuqhCfrTPp1H0YbQ9PmL
Youtube:
第1楽章
第2楽章
第3楽章
第4楽章
(Vn.4 Shusei)